空嘘とAurora

基本的に趣味と現実逃避。時々小説。

タグ:おじさんと少女

 とりとめもない会話をのろのろと続けているうちに、ついに悠花からの相槌がなくなった。 呼びかける代わりに、掛布団の合間を覗いてみる。そうすると横向きに枕に埋もれている小さな顔がそこにあって、繊細な二重の瞼は今、静かにその両目を閉ざしていた。 あんなに、眠 ...

 布団に押し込まれて、少し外出したと思ったら白城さんが帰ってきた。 体温計と風邪薬と、ボアフリースの部屋着を買ってきた。パステルピンクとミントグリーンの上下、どこかのチェシャ猫みたいな太いストライプ。着心地も見た目も、もこもこ温かくてかわいい。まるで自分 ...

「37℃か」 買ったばかりの体温計は上手く機能を果たして、俺の手の感覚が間違いでないことを証明してくれた。サイドボードの上にガサガサと、風邪薬やら冷却シートやらを放り出す。それを眺めながら、半身を起こしたままの悠花が背中を丸めた。「だから、大したことないで ...

 ……これ以上はまずいよなぁ。 映画の進み具合と時計と壁にかけた制服に相違点を探して、カーテンの端を少し持ち上げてみた。昼間よりは弱くなった雨脚。引っ張ってみたスカートの裾はまだ完全に乾いてはないけれど、出発点のことを引き合いに出せば着れなくはなさそうだ ...

 字幕の独特のフォントは、物語を彩る装飾品の一つだといつも思う。演じている本人の声、間の取り方、感情、それにひっそり添えられた、紛れもないドラマの一部。 だから入り込んでしまえばあっという間で、そうなると外が雨だということも隣に悠花が居ることも緩慢と薄れ ...

このページのトップヘ