空嘘とAurora

基本的に趣味と現実逃避。時々小説。

カテゴリ:空嘘物書の書斎 > 空嘘物語集

 砂粒が目に入って思わず目を擦った。  振り向いた掃き出し窓の先、広がる庭は確かに彩良く繁っていて、その穏やかな姿に、つい自分の役目について稀薄になってしまう。  今頃は、どの辺りを奔っているだろう。  目蓋を閉じたって彼らの元へ行けるわけではないのに、見た ...

 靴底の音がやけに甲高く聞こえて、思わず眉を顰めていた。 病院に似て薄暗く、学校に似てどこか騒がしい、長い廊下の最中。見分けのつかない扉が墓石のように並んでいて、その前を見向きもせずに進んで行く。行先は分かっていた。だから慣れた振りをして両足を動かす。欠 ...

 頑丈だけが取り柄のシリンダーに鍵を差し込んでドアノブを引く。重苦しい軋音を上げながら開いた先は僕の部屋だというのに真っ白で、思わず眉を顰めそうになる。 湿った臭い、どこからか忍び込んだ霧の気配に、とうとう消えてしまったんだと覚悟した。 けれど靴を脱ぐよ ...

 世界が崩れる音がして、ゆっくり取り戻した聴覚が、窓を叩く雨音を捉えていく。 手を伸ばした毛布の隙間が平坦で、頭を上げれば、差し込んでくる夜の光に君が濡れている。指先が冷たくなるのも厭わずに硝子の表面を撫でて、透明な眼差しを窓外へ投げ掛けている。 雲の切 ...

 目を開けたのと、肺一杯に息を吸いこんだのは防衛本能の一連だったのだろう。 横になっているというのに、ぐらぐらと眩暈がして世界が揺れている。仕方なくもう一度強く目蓋を閉じて、呼吸をすることに集中する。 一緒に両の掌を握り込んだ。汗をかいているらしい、背中 ...

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