空嘘とAurora

基本的に趣味と現実逃避。時々小説。

カテゴリ:空嘘物書の書斎 > 『Aurora Syndrome』

 グラスロードのビルはまだあちこち明かりがついていて、この一帯もまた眠らない街なのだと煌々と証明している。 月齢12、現在の時刻は午後11時48分。月と時刻と方位に気を付けるならば、扉を潜るのに最善の瞬間は今日しかない。 本来ならば、00時00分00秒の時点で推察し ...

 少女にしか聞こえない程の声量に調節して、彼女を振り向かせることを成功させる。無感情を決め込んでいた彼女の目元に、ほんの少しだけ不審げな色が垣間見える。ゆっくりと深く、瞬く。 先刻初めて私を見た瞬間は、何も感じていなかっただろう。けれど今、彼女の真名を口 ...

「恨みがあるわけじゃないんだろう?」 篠崎の言葉に反応して、ユリカがやっと刀から指先を下ろす。それでも左手は鍔の辺りに這わせていて、緊張を解き切った様子ではない。「見えるの」「ちょっとならな」 口角を歪ませて、不本意げに篠崎が頷く。彼がそう言い、彼女がそ ...

 時間ばかりが過ぎてゆく。 篠崎が設けたみはるのタイムリミットはとうに過ぎていたが、動きがあったせいか彼女が行動を同じくすることを嗜めることはなかった。そればかりか、学生の就労時間の上限のほうが近い。篠崎が時折腕時計を確認している所を見ると、失念している ...

 ベネシャンブラインドの外側は深い夜で、硝子越しに伝わってきた冷たさがそのまま室内の空気さえ静寂に変えていた。 とある雑居ビルの二階、篠崎探偵事務所。所長の篠崎恵は生憎の外出中で、事務所には今彼の助手の青年と私だけが控えていた。 青年の名は高瀬和弘。近隣 ...

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