さて、一つ前の吐き出しで私が雷に撃たれてもとい燎原の火に妬かれて以来身体の痺れがとれないという話をしたと思いますが、いよいよもって彼について今の時点で辿り着いている考察をまとめておこうと思います。

たぶん今後さまざまなイベントや幕間などで明らかになっていくとは思うので(実際、先日公開されたパッションリップの幕間で少しチラ見えした)、その前に一度総括を。


ここからは少なからず2部1章までのネタバレが出てきてしまうと思うので、記事的には一段深くしておこうと思います。

加えて、完全に個人的な解釈です。公式で言及されていない部分にもあれこれ考察していますので、まあこういう考えもあるんだなーくらいで留めてください。



主題をつけるとするならば、
『サーヴァント”アントニオ・サリエリ”は誰なのか?』



サーヴァント、アントニオ・サリエリ。クラスはアヴェンジャー。
FGO第2部1章で登場した、物語上欠かせないキャラクターのひとり。

英霊というからには当然出典があって、歴史上何らかの偉業あるいは悪名を馳せた人物として名前が刻まれている――筈なのだけれど、いかんせんあの神童モーツァルトでさえ☆1のキャスターとして配置されるのが限界。だというのにサリエリは☆3のアヴェンジャーとして登場する。

(そもそもサリエリって、具体的に何した人だっけ?)
その解答に現時点で真っ先に思い浮かぶとすれば『モーツァルトを暗殺したといういわれのある人』が大多数で、もしかしたら音楽に興味がなければここまで聞いたことさえない人物かもしれない。

つまり、彼が銀枠の☆3(モーツァルトより2つも多い)のサーヴァントとなった理由こそが、大衆が噂した『モーツァルト暗殺伝説』ただ一点。
それを無辜の怪物と呼ぶ。
大衆、民衆の思い描いた人物像。実際に本人がどのような人物だったかは関係ない。
「サリエリという男がモーツァルトを殺した」。その醜聞が好奇心が悪意が独り歩きして寄り固まって産み落とされた存在。

或いはモーツァルトを死の縁に追いやった『灰色の男』。
我は死、我は闇。
神に愛されしものを殺すもの。
それがサーヴァントとしての彼の正体。
我はサリエリではなく、人々の醜聞が産み落とした無辜の怪物であり、灰色の男であり、サリエリの自我の欠片である、と。

そう、サリエリというただの人間を基盤にして作られた、どこにも実在しない反英霊なのだ!

と、結論付けられないのが彼の難しい所。
だってこの人、ことあるごとに「私は誰なのだ?」って頭を抱えるんですよ。

最終再臨のイラストを見る限り外見は本人と同じだろうから(モノクロだから髪や目の色は違うかもしれないけれど)、問題は中身です。

気になるのは、出典が”『灰色の男』、モーツァルト暗殺伝説など”になっているのに、彼こそがモーツァルトを殺した犯人だという噂が元になっているというのに、彼自身が「本当に殺したかどうかは関係ない」と言ってしまう。
挙句、「今度こそ、この手で殺してやるとも。」と。
ここで既に矛盾している。

自分はモーツァルトを…アマデウスを殺していないと言ってしまっている。アマデウスを殺した犯人などこの世に存在しないと言及してしまっている。それが事実であり真実だと。
アナスタシアでの回想(おそらく生前の彼)は当然、毒殺を事実無根だと否定しているしそれが真実だと分かっている、しかし今の彼は『灰色の男』、モーツァルトを「毒殺した」張本人のはず。
それを何故、「今度こそ」なのか。
サーヴァントになった後でさえ、「サリエリはモーツァルトを殺していない」「実際に殺したかどうかは重要ではない」、口が裂けてでも「自分が殺した」とは言わない。

モーツァルトを殺した本人でないのなら、誰なのか。

ちなみにプロフィール読み進めると、本来のサリエリについて触れられている段があって、
「思慮深く落ち着いた性格の持ち主」なのが「無辜の怪物と化してしまった」ことで精神がひび割れて、「『灰色の男』と融合」したことも決定打になっている、らしい。
ひび割れている精神そのものは本来のサリエリで、スキル『無辜の怪物』を得てサーヴァントになったと。ちなみにこの『無辜の怪物』、『自己否定』との複合スキルだそうで。

自己否定。
己の何を否定しているのか?
そろそろ見えてきたような。

「私は誰だ、誰なのだ」

彼に言わせれば「サリエリという人間は死んだままで、英霊にはなっていない」「我はサリエリではない」。
マリー・アントワネットを前にして「貴方の兄上には世話になった」だの、「音楽を習いに来る子供など(中略)ゆえに純粋な子供の相手など初めてだ」だの、音楽は真に聖なるものだと、サリエリの記憶をぽろぽろと引き継いで語っておきながら今更「サリエリではない」と言ってしまう。

「我はサリエリではない」。
我はゴットリープを殺すもの。
確かに生前のサリエリはアマデウスに対して純粋な友として以上にその才能に対する憧憬や愛憎を抱えていた、けれど、本当に殺したわけではなかった。
あの才能があるから、神の愛を受けているから、どうしたって殺せるはずがない。

ならば、今こうして、あの男を殺さねばならないと剣を握る、「私は誰だ?」
時折不用意に浮かぶ記憶は何なのか?
戦闘不能時には自我が表出したように「殺せるものならとっくに殺していた」と呟きながら消えて行く。
彼と同じ容姿で、彼と同じ音楽を愛して。彼と同様に、アマデウスを救わなかった世界を憎む。


ねえ、やっぱり貴方、サリエリさん本人なんじゃないですか?