誰にも渡しちゃ駄目だよ、と
悪戯に立てたひとさし指の向こうであなたが言った

手のひらの上に乗せられたミントグリーンの封筒の
その中身は分からなかったけれど

いいかい、誰も居ない場所で、例えばきみの部屋で
たった一人で見るんだよ
きみだけのために用意したのだから
誰にも渡しちゃ駄目だよ
もしどうしてもというのなら、びりびりに破いてゴミ箱に捨てるんだよ

あなたの言いつけを守って、私の部屋で
カーテンを閉めて、そっとクローバーのシールを剥がした
あなたの手から直接届いた
アナログの便箋が入っているのかとそわそわしていたのに
出てきたのは、一枚の

思わず息を詰まらせる
そこには暖かそうなセーターを着て
秋色の空の下に立つあなたの姿

まなざしは真っ直ぐこちらに注がれていて
(きみだけのために用意したのだから)
確かに私を見詰めている

その視線は遮るものなく真っ直ぐで
両手はポケットに収まっているのに
心臓を直接触られているみたいに
指の先まで痺れて、喉の奥が締め付けられて
苦しいのに目がそらせない
まばたきひとつするはずもないのに

確かにあなたが言った
誰にも渡しちゃ駄目だよ
たった一人で見るんだよ、と
悪戯に立てたひとさし指の向こうで
その意味が全て

私に向けられた視線
言葉ひとつ投げかけることもなく
ただそれだけで
頬がみるみる熱くなる
これが恋なのだと
黙ったまま、口元の淡い笑みさえ放してくれない

苦しくて、苦しくて
うずくまって
どうしようもなく携帯電話を手にとって
きっとお見通しなのだろうから
コール音が切れたあと、もしもし、と
やっぱり微笑みを隠したあなたの声

だから

「私も、」

まだどきどきとうるさい心臓を抱いている