時間は有限だ、時間は私だけのものじゃない。
私を取り囲む『だれか』の中にも時間は流れていて、正直な所、私のものよりはそちらのほうに比重を置いている。

死の淵に、或いは生が背を向ける瞬間に遭遇したことは幾度かある。
自らの、誰かの、親しい人の、その度に積み重なってきた思いではある。

何年経っても忘れないこと、目を閉じて開けたあとのこと、窓の外で家が潰れていく様子を見ていたあの日のこと。
それを普段は意識の外に追い遣っていること。

思えば自分は、何も成長していないのだろう。
『面倒』なとこは追い出して、『楽な』道を選んでしまうこと。
口を閉ざし、脳だけを回転させること。
時に多大に甘え、かと思えば腹を立て、軽んじる。重きを置く。

想うだけなら簡単だ。想うことで決着してしまうこともある。
満足、と言い換えてもいい。快楽、怠惰、横着。

大人になる時が来たのかもしれない。
とっくの昔に来ていたのかもしれない。
目を逸らして、深く息を吐いて、心を躍らせて宥める、その繰り返し。
欠点だと思っている。直せない、直さないのも甘えているのだと判っている。

溜息。焦燥に裏付けされた。
悪い道の中に良い道を探し出す練習を重ねる。
大切な人だということに変わりは無いのに、忘れている。
だから子供なのだと。

少しずつ、変わる練習はしてきたつもりだ。何から始めればケジメになるのかも、今なら選び出すことができる。けれど心は、急いて、気を抜けば叫んだり嘆いたり、或いは女優に見立てて涙を流したり。
強く両手を握る。
明日からの為に祈る。
どうか、私の望む正しい未来が待っていますように。

例えば寿命が存在するのなら、その報酬に私の山を切り崩して差し出しましょう。
だから、どうぞ、どうぞ、私の大切なあの人をどうか悲しませないでください。

まず今夜は、長針一回り分早く蝋燭を消して、その代わり同じくらい時間を無駄にしないように、息を吐きましょう。
どうせならば、坂道を駆け上る勢いをつけて。