雨の音に手を引かれ、私は長い長い階段を静かに下っていく。

静寂。静謐。
閑静とも言えるこの思考の内は、まるで粛々と夜道を歩くのに似ている。

早鐘の胸の鼓動は、興奮か、恐怖なのか。
何れにせよ根底にあるものは畏怖で、崇拝で。
あるいは嫌悪で。

愛とは表裏である。
憎しみとは傾倒である。

滾々と湧き出づる我が戯言は、
真摯な瞳を持って愛しきストーリーテラーとなる。

夢。ひとつ空から落ち。
海を為した其れは、やがてひとりでに空へ帰って行く。

その温もりは一瞬で私を盲目に陥らせ、誰の言葉ですら貴方への愛を拒むことは出来ない。
数多の迷い道。それすら見えはしない。
けれど、そんなことは初めから無意味なのだ。
目を閉じれば貴方の握るナイフも、鋭い牙も、背に広がる黒い羽根も、射竦める黒耀の瞳も、
何れにせよ世界を脅かす心配もなくなるのだ。


雨。ぽつぽつと現実を溶かしていく。
暖かなぬかるみが私を捉えて、変則的な気配が今も私の手を引っ張っていく。

例えば目を閉じた先も現実ならば。
私と貴方しかいないこの世界は、永遠を知る唯一の場所だと胸を張ることが出来る。

目も感情も思考回路も。
勿論耳は、貴方の声が奪っていく。